テディ・ベアからのクリスマスプレゼント
文:如月みめい
絵:北森紀子
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テディ・ベアからのクリスマスプレゼント
文:如月みめい
絵:北森紀子
さきちゃんへ
パパ・ママより
もうすぐ クリスマス、という ある日の ことです。
さきちゃんは こうえんで ブランコにのって
あそんでいました。
「もうすぐ クリスマス。 サンタさんは 何を
プレゼントしてくれるのかな?
あっ!あれは 何だろう?」
ひいらぎの 木の下に、何か おちています。
さきちゃんは ブランコから とびおりると いそいで
はしっていきました。
木の下を のぞきこむと、そこには 小さな テディ・ベアが
ころがっていました。
うでを うんと のばして ひろってみると、もう 何日も
そこにあったのか、
テディ・ベアは ドロだらけです。
「すぐに きれいに してあげるからね」
さきちゃんは テディ・ベアを お家に もってかえる ことに
しました。
せんめんだいに ぬるまゆを ためて せんざいを
とかしてから
テディ・ベアを 中に 入れます。
ゴシゴシ いっしょうけんめい あらっていると、
まっ白な おゆが みるみるうちに 茶色に
なっていきます。
おゆを とりかえて すすぎを すると
「ほら、きれいに なった!」
つぎは かわかさないと いけません。
さきちゃんは テディ・ベアを 日あたりのいい まどぎわに
おきました。
とっても いい おてんきだったので、小さい テディ・ベアは あっというまに
かわきました。
「よかったね、くまくん。ピッカピカだよ!」
テディ・ベアも、きれいに なって
ニコニコしているみたいです。
こうして、さきちゃんと テディ・ベアは お友だちに
なりました。
それから、さきちゃんと テディ・ベアは いつも
いっしょです。
ごはんを たべるときは テディ・ベアが となりに
ちょこんと すわって いるし、
おふろの ときは ぬれないように せんめんじょで じっと
まっています。
もちろん、ねむるときだって いっしょの おふとんです。
テディ・ベアからは おひさまの いいにおいがして
さきちゃんは ぐっすり ねむれました。
クリスマス・イブの ことです。
「ねえ くまくん、サンタさんは 何を プレゼント
してくれると おもう?
おかしかな、それとも おもちゃかなあ・・・」
さきちゃんは テディ・ベアと しばらく おしゃべり
していましたが、
やがて ねむって しまいました。
テディ・ベアは 大きな 黒い ガラス玉で できた 目を
パッチリと あけて、
さきちゃんが スヤスヤと ねむるのを 見ていました。
どのくらいの 時間が たったでしょう。
よるも すっかり おそくなったころ、まどの 外が きゅうに
あかるくなりました。
テディ・ベアは、カーテンの むこうの まっ白な光を
しばらく 見ていましたが、
やがて むっくりと おきあがって 言いました。
「こんばんは! サンタさん」
「おや、くまくん じゃないか!」
まどから かおを のぞかせたのは、 白い おひげに 赤い
ふくの サンタクロースでした。
「ずっと さがして おったよ。 さきちゃんの お家に
いたのかい?」
「うん。さきちゃんに たすけてもらったんだよ。
あのね サンタさん、ぼく さきちゃんに プレゼントを
あげたいんだ・・・・・・」
テディ・ベアと サンタさんが 話していると、さきちゃんが
目を さましてしまいました。
「うーん・・・・・・そこにいるのは、だれ?
あっ! サンタさんだ!! それに くまくんが
はなしてる!!」
さきちゃんは 目を まんまるくして びっくりしています。
「さきちゃん、ぼくは サンタさんがつくった
テディ・ベアなんだ。
そりにのって サンタさんの おてつだいを していたら、
おっこっちゃって・・・・・・」
「サンタさんの おてつだいって、なにをするの?」
「いい子が いる家を しらべるんだよ。
それからね・・・・・・」
テディ・ベアは まえあしを ポン! とたたくと
あっというまに
サンタクロースの かっこうに
変身しました。
もうひとつ たたくと、つぎは さきちゃんの パジャマが
サンタクロースの服に はやがわり!
そして もっと おどろくことに、もうひとつ たたくと
サンタのテディ・ベアが ひとつ、
もう一回 たたくと もうひとつ・・・・・・。
さきちゃんの おへやは 小さな サンタ・ベアで
いっぱいに なってしまいました!
「よーし みんな、そろそろ プレゼントを くばる
時間じゃよ」
「はーい、サンタさん!!」
サンタ・ベアたちは いっせいに へんじを すると、
ふんわりと うかびあがりました。
「いってきまーす!」
サンタ・ベアたちは プレゼントが 入った ふくろを
もつと、
つぎつぎと さきちゃんの おへやの まどから
出ていきました。
「いってらっしゃい、気をつけて!!」
さきちゃんの おへやには
さきちゃんと サンタさんと
テディ・ベアだけが のこりました。
「じゃ、くまくん、わしらも そろそろ いくと するか」
「さきちゃんも いっしょに いこう!」
サンタさんと テディ・ベアと さきちゃんは まどの 外の
ソリに のりこみました。
「しゅっぱーつ!!」
サンタさんの ソリは 町の あかりが すっかり
見えなくなるくらい のぼってから、
やっと 止まりました。
テディ・ベアは ふわっと 空に うかぶと、また まえあしを
ポン!
こんどは テディ・ベアが 大きくなりました。
ちょうど 二倍の 大きさです。
ポン、ポンと たたくと、さきちゃんと 同じくらい。
ポンポンポンと たたくと、サンタさんくらい。
ポンポンポンポン・・・・・・・・・みるみるうちに、
トラックくらいの 大きさになりました。
「おまけに もうひとつ!」
ポン! と たたいて、さいごは とてもとても 大きい
でんしゃくらいの テディ・ベアになってしまいました!
「さきちゃん、おいで!」
テディ・ベアが いうと、さきちゃんの からだは、
ひとりでに ふんわりと うかびあがりました。
「じゃ、わしも プレゼントを くばってくるからな」
サンタさんが いってしまうと、テディ・ベアは 大きい
大きい 白いふくろを 出しました。
「さきちゃん ぼくたちの プレゼントだよ」
ふくろの 口を しばってあった ひもを ほどくと、
中から 白い 小さな キラキラしたものが、たくさん
たくさん でてきました。
「わあ、ゆきだ!」
「さきちゃん、行こう!」
さきちゃんサンタと サンタ・ベアも、いよいよ
しゅっぱつです。
さきちゃんサンタと サンタ・ベアは ふわふわ ゆっくりと
とんでいきます。
ふくろから 出ていく ゆきも、ふわふわ かぜにのって
おちて いきます。
ずっと 下の ほうでは、小さな サンタ・ベアたちが
町じゅうの あちこちを いそがしそうに とんでいます。
サンタさんの ソリは、まるで かぜの ように
かけています。
町じゅうを 一周すると、ふくろの 中の ゆきは ちょうど
なくなりました。
「やっと おわったね。ありがとう さきちゃん」
テディ・ベアが ポン! と まえあしを たたくと
あっというまに もとの ちいさな テディ・ベアに
なりました。
ポン! と もう一回たたくと、さきちゃんと テディ・ベアは
さきちゃんの おへやの 中に いました。
サンタさんの ソリが、まどの 外に まっています。
「さきちゃん、ぼくを たすけてくれて ありがとう。
くつしたの 中に、ぼくからの おてがみが
入っているからね。
また、来年の クリスマス・イブに 会いにくるよ」
「ありがとう くまくん。げんきでね!」
さきちゃんは ソリが 見えなくなるまで、ずっと
手を ふっていました。
さきちゃんの くつしたの 中には、 テディ・ベアからの
おてがみが 入っていました。
「くまくん、また 会おうね。きっとだよ」
さきちゃんは 来年の クリスマス・イブが とっても
たのしみに なりました。
(おわり)
※「テディ・ベアからのお手紙」
さきちゃんへ
メリークリスマス! さきちゃん。
今年の クリスマス・イブは さきちゃんと
いっしょだったから、
今までの 中で いちばん たのしかったよ。
さきちゃんと プレゼントを くばったこと、ぜったい
わすれないよ。
来年も、サンタさんと サンタ・ベアたちと いっしょに
さきちゃんに 会いにいくね。
さきちゃんの やさしいこころが、だいすきです。
来年、もっとすてきになった さきちゃんに 会うのを、
たのしみに しているよ。
ぼくたちは、フィンランドという 国にある サンタさんの
家に かえります。
とおい フィンランドから、日本にいる さきちゃんのこと、
いつも おもっているからね。
じゃあ、また 来年の クリスマス・イブに 会おうね。
それまで、げんきでね。
さきちゃんのことがだいすきなテディ・ベアより